見つめる目(7日目)                                    
                                       
           
                     
ストゥーパに描かれた目 草原を行く。気温は10度くらいだ。
                       
強い朝の光がロッジの部屋に差し込んできて、体が十分あったまったところで出発した。ドゥーサという草原を軽く上っていく。ここから行きかう人も少なくなりまわりの自然と自分だけの時間が多くなってくる。たまにすれ違うトレッカーやシェルパ人がかなり珍しそうに僕のバイクを見ている。天気はすばらしく高度順化もうまくいっており快調に草原を走りきった。
                       
頭を使って上んなきゃ
ドゥグラを過ぎるとエヴェレストから流れ出るクンブ氷河の始まりで、氷河までは300mほど一気に急坂を上らなくてはならい。この坂はかなりこたえた。もちろんバイクに乗ることは不可能で、頭の上に乗せてバランスをとりながら行くしかない。フレームの前三角部分にヘルメットをすっぽり当てはめてあとはハンドルを片手で持ってバランスをとる。ここまでくるとこのスタイルにも慣れてきて、急坂も片手で岩につかまりながらなんとか登ることができる。少しくらいすべってバランスを崩してもバイクはちゃんと頭の上に乗っている。うまくバイクを頭に載せることはできたが、僕自身をコントロールすることが難しくなってきた。ここまでくると空気の薄さは確実に実感できるものとなる。10歩進んでは深呼吸する状態が続き、峠は見えているのだが一向に近づく気配はない。距離感覚もおかしくなっていたのだろう。初めてつらいと思った。

   
           
 
こうやって頭に載せて歩いていた。    
 
白い世界へ(8日目)
 翌朝起きると雪が積もって一面真っ白だ。夜のうちにかなり降ったようだ。でも天気はすこぶるよく、空がどこまでも透き通っている。少し頭痛がする。食欲もなくなってきて、朝はココナッツクッキーしか食べられない。とうとう高山病の兆候が出てきたようだ。まだ症状は軽いので、早めに行動しようと朝の光が差し込む前に出発した。
 インド人のトレッキンググループのポーター二人と一緒になる。彼らもゴラクシェプまでいくという。彼らに道案内をしてもらい彼らのペースについていく。足元は5センチほどだが雪が積もってどこがトレイルなのかわからない。時々雪の上をペダルを回して進んでみるが長くは続かない。乗ったり降りたりの繰り返しだ。しばらく歩いたところで、突然光が差し込んだ。朝日だ。それまでのぼんやりしたグレーだった周りの景色が一瞬にして変わった。もうまぶしくて目を開けていられないくらい光があふれ、自分を含めてポーターの二人とも白い世界に浮遊しているようだ。
 日が昇るにつれて雪は消えていった。最後の岩場を担ぎ上げるとダウンヒルのスタート地点であるゴラクシェプに到着。手前のロッジに入って一番楽しみにしていたゴラクシェプでのミルクティーを飲んだ。うまい!
 
 
まぶしくて目が開けられないほどの雪の世界になった          
 
         
                                     
朝日が昇るメラピーク           もう朝は氷点下だ        
                                     
                         
ヤクにもうっすらと雪が積もる
 
 
最後のロッジ ロッジの中で食料を整理するシェルパたち
 
地球の先端(9日目・10日目)
一日雪のため身動きができずロッジで過ごす。翌朝起きると雪がわずかだが積もっている。しかし空には雲の切れ間も見える。8時ごろだったろうかとうとう青空が切れ切れではあるが現れ始め、アメリカ人とカナダ人のトレッカーと一緒にカラパタールに登り始めた。頂上に着くとローチェとエヴェレストが並んで見えた。とても地球の一部とは思えなかった。もうあの先端は宇宙だと思った。あそこにいってみたいと思う人の気持ちが少しわかったような気がした。

 
あそこが地球で一番宇宙に近い場所 カラパタールのタルチョー
         
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