クンブ氷河をクルージング                        
                                                           

ダウンヒル
 エヴェレストを見て高山病を吹き飛ばした僕は、いよいよダウンヒルを始めた。クンブ氷河の平原に下りるまでは急な岩場だ。トライアルの選手なら難なく降りていくのだろうが僕は安全に担ぎ下りる。岩場をパスすると氷河の草原地帯だ。ロブチェをすぎて氷河の南端まで緩やかな下り。トレイルに沿ってのんびりクルージングだ。あー今までの苦労はこのためにあったんだとじーんとくるくらい気持ちいい。もちろん自然へのインパクトを考えて決してスピードは出さない。シェルパたちがちょっと小走りする程度の速さだ。ゴラクシェプのロッジで聞いた話だと、ここをマウンテンバイクで下る経験をした人は過去に何人かいるらしい。あるアメリカ人はエヴェレストベースキャンプまでバイクを担いでいったという。日本人も何年も前にマウンテンバイクを担いでカラパタールまでいっているそうだ。しかし軽量なフルサスバイクでここを快適にクルージングしたのは僕が初めてではないだろうか。信頼できるバイクをしっかりとチューニングして気持ちよく山を下る。マウンテンバイクは山と気持ちよく同調するための最適な手段だと改めて思った。

行きに苦しめられたドゥルガの激坂にまたしても苦しむ。岩場を延々と担ぎ下ろし、かなり膝にこたえる。小さな橋を渡るとペリチェの草原だ。

                                   
       
石造りの作業小屋。自然に溶け込んでいる   ロッジの前に干してある表土。いい床材になる  
                                       
自由な時間(11日目)
 ペリチェから川を渡ってオショーの草原に出る。ここは緩やかな下りでまたしてもここまできてよかったー!と叫びたくなるくらい気持ちいい。短い草がおおい茂り、緑のじゅうたんのようだ。またしても夢の中のようだ。トレイルが草原中あちこちにできていて、どのルートを取るのも自由だ。あるトレイルは低い木の間をぬけ、あるトレイルはちょっとした岩場下り。そして崖の脇を走ったりもする。網の目のようになっておりどれも最終的にひとつの道にたどり着く。トレイルを外れないことが自然にやさしいダウンヒルの大前提なので、これまでなかなかこんな走り方はできなかった。あちこちに張り巡らされたトレイルを走れたこの草原で僕は一番の‘自由’を感じた。
                                       
     
                                                           
ゴンパの小僧たちと一緒に。マウンテンバイクの大試乗会になった!     まわすだけでご利益があるマニ車  
                                                 
                               
      トレイルのいたるところに経文を掘り込んだマニ石がある。これは一文字1センチ四方ほど。かなり細かい作業である。
                 
歓迎される
 ナムチェに帰ってくると、9日前に僕のバイクで遊んだ連中が歓迎して迎えてくれた。行きに泊まったロッジに行って、主人のプサンさんに帰ってきたと報告した。‘よくやった、よくやった’と、彼はシェルパ・シチューをご馳走してくれ、ハーダと呼ばれる白い絹でできたマフラーのようなものを首にかけてくれた。客人を特に歓迎するためのものだそうだ。その夜はプサンさんが自家製のチャン(米から作るお酒。濁り酒みたいで甘い)をご馳走してくれた。低地に下りてきた僕は緊張が解けて、気持ちよくチャンの夜を酔った。プサンさんに次回は必ず友達を連れてくるからそのときはまたよろしく、と再会を約束してベッドに向かった。

谷に響く民謡(12日目)
 とうとうダウンヒルも終わりに近づく。ナムチェの激坂を下りドゥドコシの流れと再会する。気持ち水量が増えているようだった。今日から6月である。雨季の始まりだ。幸いこの日も天気がよく、十分な光を受けた深い森の緑色を楽しむ。集落の数も増えてきて、また子供に囲まれながら進んでいく。花もあちこちに咲いており二日前までの厳しい世界とはがらっと変わってとても平和だ。着込んでいた服も今はバックパックの中にしまい、Tシャツでこの谷の空気を感じる。ハーカさんというぺリチェでロッジの主人をしているシェルパ人がシーズンを終えて下山途中だった。パグディングまで交代でバイクに乗りながら下る。とても楽しそうだった。お礼にと、ロッジのギターでネパールの民謡を歌ってくれた。がっしりとした体格でちょっと照れて通りを見ながら繊細な声を聞かせてくれた。ペンションのようなロッジの前で贅沢な時間を過ごした。ミルクティーとともに。そして、ハーカさんの民謡を口ずさみながらルクラまでの緑の谷を走り抜けた。

                 
               
    ペリチェのロッジのご主人ハーカさん
民謡を歌ってくれた
                 
           
   
葉が花のようになっているユーフォルビア。
ナムチェより低いところに多く見られた。
 
 
    ペリチェの草原に多く咲いていた、サクラソウ                    
                     
 
シャクナゲの一種。20cmほどの高さで草のよう。   トレイルに咲く赤いシャクナゲ  
       
   
主なメカトラブル
・ 5日目 オショーの草原でチェーン切れる。インド人のトレッキンググループが真剣に心配してくれたけど、10分 後には修理完了。
・ 6日目 ディンボチェでミドルチェーンリングが曲がる。ロッジでハンマーを借りてコールドセッティングして応急処 置。何とか使えるようになったが安定せず、このあとはほとんどインナーを使う。
・ダウンヒルの際高度にあわせてこまめに空気をいれた。気づくとリム打ちするくらい空気圧が減っていた。
・ パンクなし。
   
装備  
               
全携行品(すべてバックパックの中に入れた)
   
工具類(極力少なくした)  
   
日程  
 
ルート
データ
1日目 ルクラ→パグディング(2652m)はじめはしばらくゆるい下りで楽しめる。 70%ライド30%トレック
2日目 パグディング→ナムチェ(3440m)ドゥドコシ川にそってトレックアップ。 25%ライド75%トレック
3日目 ナムチェで高度順化。シャンボチェの丘に登りのんびりすごす。 高度順化
4日目 ナムチェ→ティンボチェ(3867m)シャンボチェ沿いのシングルトラックを満喫。 50%ライド50%トレック
5日目 ティンボチェ→ディンボチェ(4350m)この日は最高の景色だ。アマダムラム峰が行く手にまぶしい。 50%ライド50%トレック
6日目 ディンボチェで高度順化。チュクンまでのトレックが楽しい。 高度順化
7日目 ディンボチェ→ロブチェ(4930m)この日はかなりきつい上りだ。とうとう氷河の中へ。 25%ライド75%トレック
8日目 ロブチェ→ゴラクシェプ(5120m)クンブ氷河の中をゆっくり上る。空気が薄くトレックアップ。 100%トレック
9日目 ゴラクシェプで休養。 休養日
10日目 カラパタール(5500m)へ。世界の屋根エヴェレスト、ローツェが目の前。
ダウンヒル→ペリチェ(4380m)この日のためにここに来た。極上のトレイルライド。
90%ライド10%トレック
11日目 ダウンヒル→ナムチェ(3440m)アップダウンの連続で森の中を走りぬける。 80%ライド20%トレック
12日目 ナムチェ→ルクラ(2804m)集落と畑の中をクルージング。 70%ライド30%トレック
     
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