もう燃え尽きていた。
一昨年の夏。自分で云(い)うのも小恥(こは)ずかしいが、私は弛(たゆ)まぬトレーニングを続け、体重を抑えるために食べたいものも我慢して、日本最大級の自転車ヒルクライムレース(上り坂だけで競われる酔狂(すいきょう)なレース)、「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」に臨(のぞ)んだ。サイクリストが「ノリクラ」と云えばほぼ間違いなくこのレースを指す、有名な大会である。結果、距離20km、標高差1200mの上りを1時間10分21秒という、自分としては「超」のつく満足なタイムで走りきったのだった。素晴らしい達成感があった。やった!できる限りの努力をした。もうこれ以上は無理だろう。…ん?これ以上は無理?じゃあ来年以降は記録が落ちるばかりだな…。だんだんと空虚感が漂(ただよってきた。
「サイクル・トゥ・ザ・サン(CYCLE TO THE SUN)」
太陽に向かって走る…。ハワイはマウイ島の最高峰ハレアカラ(Haleakala)山頂まで海岸線から一気にかけ抜ける、標高差3000m、距離56kmの世界最大のヒルクライムレースだった。「ハレアカラ」とはハワイ語で「太陽の家(house
of the sun)」を意味するという。なるほど、太陽の住処(すみか)がゴールか。
大会公式HP(ホームページ)(http://www.cycletothesun.net/)を見れば、
「地球上でもっとも厳しい坂道を(Race up the steepest road)上るレース( on earth)」
とある。沸々(ふつふつ)と闘志が湧(わ)いてきた。挑戦したい…。
気がつくと、各方面に根回しをする自分がいた。こういう行動は早いんだよなぁ。
再び早朝トレーニングに勤(いそ)しむ日々が始まった。